ポール・ポッツさんの丸い歌声には魅了されたが

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ポール・ポッツさんのことをご存知の方いらっしゃるでしょうか?イギリスのオペラ歌手です。2007年のイギリスのオーディション番組ブリテンズ・ゴット・タレントで優勝して、歌うことを仕事にする夢をかなえた人です。ここにポールさんが予選でその歌声で審査員を驚かせる動画があります。プッチーニのオペラ「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」を歌っています。

他にポールさんが貧しい境遇、冴えない容姿に悩み、苦しみ、愛する妻の支えで歌を仕事にする夢をかなえるまでの軌跡を追った感動秘話の動画も観ましたが、私はそれにある違和感を感じました。これを単なる美談にしてはいけないと思いました。国民にこんな貧しい生活をさせて自己実現を難しくしていることに怒りさえ感じました。政治の問題だろうと思いました。それに、彼はたしかに歌うことを仕事にする夢はかなえたけど、当初の希望だったオペラハウスで歌う夢はかなえられたのかな。調べても出てきません。クラシック音楽の世界は厳しいとつくづく思いました。

その点、次に紹介する映画は労働者階級の人々と音楽の関係をしっかり描いています。Wikipediaによるとこうです。

「『ブラス!』(Brassed Off)は、1996年に制作されたイギリス・アメリカの映画。閉鎖騒動の持ち上がる小さな炭坑の町を舞台に、ブラスバンドを通じて、「音楽」と「生きること」の素晴らしさを、人間模様と社会風刺を織り交ぜて描いた作品。実話に着想を得てストーリーが作られており、モデルとなっているのは、サウンドトラックの録音も担当している「グライムソープ・コリアリー・バンド」(後述)である。」

「決勝当日。ロイヤル・アルバート・ホールに立ったメンバーは「ウィリアム・テル序曲」を力強く演奏。見事優勝を勝ち取り、病院を抜け出したダニーがサッチャリズムを批判して「この10年間、政府は産業を破壊してきた。産業だけでなく、共同体や家庭をも。発展の名を借りた、まやかしのために」「職だけでなく、生きる意志までも奪っている」とスピーチし、トロフィーの受取を拒否して「威風堂々」を演奏し、喜びの帰路につく。」

音楽への愛は強いのに、生活苦のためにバンドを辞めようとしたり、自殺未遂する者も出てきます。彼らは自分たちを苦しめるものの正体をちゃんとわかっています。ここで言うサッチャリズムとは当時の首相のマーガレット・サッチャー氏の推進した新自由主義政策のことだと思いました。新自由主義とは産業や国民を守るための規制をとっぱらった自己責任の弱者に冷たい政策のことを言います。その結果、世界的にどういう世の中になりましたか?お金持ちの人はさらにお金持ちに、貧しい人はさらに貧しくなり、格差が広がりました。

次に紹介する動画は決勝で演奏したロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」。この曲についてWikipediaで調べれば、感動がもっと深くなることでしょう。ちなみに「スター・ウォーズ」のオビ=ワン・ケノービ役で有名なユアン・マクレガーも出ています。

次に紹介するイギリス映画「リトル・ダンサー」も労働者階級と芸術の関係をガッチリ描いています。やはり小さな炭鉱町の炭鉱夫の息子の少年がバレエダンサーの夢をかなえるまでのお話。父は最初バレエダンサーなんて反対するのですが、息子が踊っている姿を見て、息子の才能に気づきます。そして炭鉱ではストライキが決行されようとしていて、父はお金を捻出するためスト破りまでしようとしますが、やはり炭鉱夫の兄がそれを止めて、炭鉱仲間に事情を話してカンパしてもらいます。こうして少年はロンドンのロイヤル・バレエ学校を受験するのです。その時の審査員の一人の先生が「お父さんのストライキ、成功するといいね」と言います。号泣ものです。そして少年は見事合格します。

映画でイギリスの労働者階級や移民、貧困などの社会問題に焦点をあてた作品を制作してきたというと、ある巨匠監督を紹介しないではいられませんね。ケン・ローチです。カンヌ国際映画祭の受賞の常連です。ここでは「わたしは、ダニエル・ブレイク」の予告動画をシェアさせていただきます。

今日はひさしぶりに長めの文章を書きました。書きたいことが書けて良かったです。



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2 comments
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『ブラス!』は映画館で観ました。学生時代と、会社やめて再び京都に住み始めた1996~98年頃は色々映画を観まくっていましたから。何を観まくったのかあまり覚えていないのですが、『ブラス!』はその中でも割と心に残っている映画です。ダニーによる最後のサッチャリズム批判のスピーチには拍手喝采しました。観てよかったと思います。

しかし残念ながら、私が『ブラス!』を観ただけでなく、数々のメジャーなのからマイナーな映画まで上映し続けた京都の映画館「みなみ会館」は今年9月末をもって閉館してしまいました。すごく悲しかったです。なんか、日本の文化芸術はどうなるのか、と言いたくなります。『ブラス!』はTSUTAYA DISCASでDVDレンタルするしかなく、NetflixやU-NEXT等の動画配信サービスでは配信されていません。

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「ブラス!」ごらんになったのですね。さすがyadaさんです。90年代はわりといい映画観られたなと思いますね。サッチャリズム批判の所はぐっときますよね。
「みなみ会館」閉館ですか。なんか東京の岩波ホール閉館と通じるものがありますね。国立大学まで法人化するぐらいだからなんかもう売れるものしか残れないのではないかと。
「ブラス!」TSUTAYAでDVDレンタルするしか手段がないのですか?Netflixはあらゆる映画を網羅しているイメージがありましたが配信されていないんですね。残念。まるで閉鎖される炭鉱みたいな運命ですね。

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